賃貸マンション等に住んでいると定期的に発生して面倒なのが、賃貸借契約の更新手続き。
契約によっては2年毎の自動更新、事務手数料なしとなっていて何事もなく勝手に更新されることもあれば、源泉徴収票や住民票などの提出を求められることもあります。
そして、まれに発生するのが貸主からの「家賃を値上げします」という通知。
入居者である借主は、これに従わないといけないのでしょうか。
まずは契約書をチェックする
このような通知が届いたらあせらず騒がず、まずは契約書と重要事項説明書(以下、重説とします)を確認してみましょう。
ここでいきなり管理会社や貸主に電話で聞いても、経験則から良い事はないと思います。
そもそも、このような通知をしてくる時点で、相手は少しでも多くのお金を回収したいと考えている訳です。
そんな相手に契約書を確認せず折衝しても得はありません。
契約書の確認ポイント
家賃や共益費、賃料など値上げについて明確に書かれているかどうかが重要になります。
ほとんどの契約において賃料等の改定については、約款(やっかん=契約書などに書かれている小さい文字の注意書きのようなもの)に以下のような記載があるはずです。
甲、または乙は賃貸借契約の更新時において、周辺相場等から著しく剥離がある場合には双方協議のうえ、賃料等を改定することが出来る。
大半の契約書の前半に記載されている約款ですが、少し難しい書き方となっていますね。
順番に読み解いていくと、まず甲は貸主、乙が借主が一般的であり、この約款の大きなポイントは2つあります。
正当な事由が必要である
協議により改定金額を定める
つまり貸主は何となくお金が欲しいからという理由で値上げすることは出来ず、周辺の賃貸マンションより明らかに安い等の理由を示したうえで協議する必要があります。
一方で賃料等が上がることが明記されており、その金額が不相応に高くない場合は原則従うことになります。
この協議により借り主が承諾しない場合、賃料の値上げは不成立となり、現在の賃料が据え置かれることになります。
賃料値上げを拒否する方法
契約書を確認した結果、協議の上にて改定するということが分かれば後は対応することになります。
そうは言っても不動産の専門家と話し合うことは面倒で、言いくるめられそうな気がするもの。
実際に、どのように対応していくのが良いのでしょうか。
書面で通知する
基本は書面での対応となります。
そもそも賃料の値上げについて訪問してくることは、あまり考えられず電話も少ないでしょう。
よって書面で届いた内容に対して書面で返答するのが通常の流れです。
書面については淡々と返答すればよいでしょう。
文面は『協議の打診を頂きましたが検討の結果、賃料は改定せず現状と致します』で十分で、この文章自体も書式によっては不要となります。
改定した値上げ賃料が記載されている書類には一切サインや押印はしないで下さい。
また返送する前にはコピーを取るか、少なくともスマホで写真に撮っておくと、後々の証拠となるので良いでしょう・
電話がかかってきた場合
電話で打診があった場合、その場で断るのも良いのですが、それすら煩わしいことなので書面で送るよう伝えることをおすすめします。
理由は電話だと何度でもかけてこられること、また言った言わないの水掛け論が発生する場合なども想定されるからです。
穏便に、かつ面倒にならぬよう済ませるには書面というアナログな手段が一番です。
また書面対応後の電話がかかってきた場合は書面の通りであり、疑問があるのであれば書面で返答が欲しいと伝えると大半のが「送ってこない」ものです。
賃料値上げに応じないと更新しない
悪質な貸主、管理会社の場合、このような脅し文句を投げかけてくることもあります。
果たしてこのようなことが可能なのでしょうか。
前述したとおり契約書に明記されている場合を除き、答えは「不可能」です。
貸主から解約を申し出る場合は
6ヶ月以上前に申し出ること
正当事由があること
が必要となります。
この正当事由とは例えば老朽化により崩壊の危険性があるなど継続した賃貸経営が不可能である場合など「明らかにやむを得ない」
ことを指します。
つまり賃料の値上げに応じないからは正当なものではありませんので、それを理由に更新しないことは法律が認めていません。
家賃値上げに焦らないために
突然の値上げに焦らず対応するためにも部屋を借りるときには契約書と重説をしっかり読んで理解することが大切です。
約款は一読しただけでは分からないことも多いですが重要なのは借り主に不利になりそうな文言がないかどうか。
難しいからといって相手に言われるがまま契約すると、こうしたトラブルの際に影響するので気をつけて欲しいところです。
焦らず騒がず、賃貸のトラブルは契約書のチェックからです。