史上最年長による優勝を成し遂げた錦鯉。
ゆっくりと寝かされていく「オジサンの姿」は伏線回収の見事さ、哀愁とともに「おっ」「あぁそういうことか」といった様々な感情を揺さぶるウイニングランだったと思います。
最終決戦3組の中であれば錦鯉の優勝は文句のつけどころはなかったと思いますが、決勝10組で考えると今年はいつも以上に疑問が残った大会でした。
今回はM-1グランプリ2021の感想と採点、さらに幾つかの問題点についてまとめます。
M-1グランプリ2021決勝の採点
モグライダー
採点 94点
トップバッターでなければ文句なしの最終決戦進出だったはず。それぐらい「バカらしい」面白さがありました。
中盤で少しボケが聞き取りにくい場面があったことで「ん?」と考えさせてしまったのは減点。それでも爆発力は十分だったと言えます。
やっていることは同じことの繰り返しですが熱量の高さで、それを感じさせない4分でした。
ランジャタイ
採点 70点
本人達としては採点が低ければ低いほど嬉しい展開だっただけに立川志らくの96は予定外だったかも。
ネタの勢い、パンチ力はありましたがハマるハマらないによって大きく点に影響しそうな気がしました。
個人的に漫才は「掛け合い」であり「話芸」だと思っているので採点は低くなります。
これこそ漫才論争が起きてもおかしくない気がします。
またトップバッターがモグライダーで2番目にランジャダイとなったことが、この後の採点に大きく影響しましたね。
ゆにばーす
採点 88点
モグライダーが最高に温めた空気をランジャタイが冷やしきるという独特の空気感での漫才になったのは少し残念。
ボケもツッコミも上手かったと思いますが、話が難しく単純に笑うことが出来ない感じがありました。
また、はらと川瀬名人の関係ってそんな感じだっけと思われた感も否めず。
特に今大会は「バカらしい笑い」を求められる傾向にあり、少しアウェイ感は否めず。
ちょうどモグライダーとランジャダイの中間に設定された気がします。
ハライチ
採点 60点
ネタ時間を大幅に超えたのは減点。
後にボケの岩井が新ネタ出会ったことを明かしていますが、きちんと時間に収めるのは基本だと思います。
そして新ネタらしくネタ自体が未完成であり、間延びしていました。岩井は「飽きるから同じネタはしない」と語っていましたが…。
真空ジェシカ
採点 96点
ランジャダイが設定した最低点とモグライダーが設定した基準点の狭間で得点が伸び切らなかった印象。
ここまでの4組と比べて熱量が足らないように見えたのか、芸風が浸透していなかったのが理由でしょうか。
少しボケの川北の声量が(意図的に)低いことによって観客の笑い声にまけてしまったことから、結果として笑いを抑えることになったこと。
ツッコミのガクのリズムが一定であったこと。
また最後のオチである酸性雨だけが本筋と関連しなかったこと。
無理やり敗因を探すなら、このあたりかなと思いますが、それでも今回の採点は低すぎです。
オズワルド
採点 93点
2本目の失速が話題になっているオズワルドですが、個人的には「1本目の過大評価」の方が気になりました。
真空ジェシカがリセットして温めた空気感に便乗した結果の高得点であり、オズワルドに向けられた期待感を上回ったとは言い難い出来だったのではないでしょうか。
ネタの掴みは完璧。漫才の技術も高かった点で「話芸」として評価されていましたが、少し中盤は苦しかったと思います。
ロングコートダディ
採点 92点
センターマイクから離れて左右に動きを出すスタイルが「漫才ではない」と見られて点が伸びなかったのは残念。
ボケの手数は少ないものの「ラコステ」など細かいボケも秀逸で、一つ一つのパンチは強烈でした。
最後のオチとなった「ワゴンR」ですが、個人的には「若女将」が見たかったです。
隠された法則がしりとりにも関わらず「肉うどん」と最後に「ん」の付く言葉をチョイスするのは、かなり勇気が必要だったでしょうね。
錦鯉
採点 90点
課題ともいえネタの立ち上がりが不安定で大きな笑いは後半に入ってから。
「紙芝居」の話など年齢をフルに活かしてきたのは見事でしたが、全体的に笑いが少なかったと思います。
審査員からも指摘されていましたが、ちょっとツッコミで頭を叩きすぎかなと感じました。
錦鯉は毎回スロースターターなんですよね…歳のせい?
インディアンス
採点 91点
今まで騒がしいボケに対してツッコミが成立しなかった感がありましたが、この日は出色の出来でした。
分かりやすく先が読める展開だったことが、功を奏する結果となり、最後のオチもきれいだったと思います。
ただ1日に2本見たいかと云われると…
そこがインディアンスの最大の課題ですね。
もも
採点 95点
結成4年目とは思えぬ堂々たるネタ運びて爆笑しました。少し採点が甘い気もしますが笑いの量としては完璧。
審査員からは前半の笑いの量やスピード感を指摘されていましたが、それを言うなら錦鯉の採点はどうなのか。
時代に反した見た目に対する偏見ネタでしたが、特に悪目立ちもなく後半の勢いは若手らしく抜群だったと思います。
M-1グランプリ2021予選10組の感想
予選10組から初登場組は残れず、勝ち上がったのは大本命のオズワルド、錦鯉、インディアンズとなりました。
高得点と高評価を得た話芸のオズワルド。
バカらしいボケの錦鯉。
勢いに上手さが出たインディアンズ。
三者三様の決勝になりそうです。
決勝3組について
今回、勝ち上がったメンバーの実力には不満はありませんが、少し採点の妙が出た気がします。
個人的な採点で見ると以下の3組が勝ち上がりとなります。
96点 真空ジェシカ
95点 もも
94点 モグライダー
これに続くのが93点のオズワルド、92点のロングコートダディです。
審査員の採点について
モグライダーが設定した基準点とランジャダイが設定した最低点。
この狭間に苦しんだ気がしますね。
ランジャダイを漫才としては評価せずとも、笑いの量や熱量で得点を底上げした(させられた)結果が、ゆにばーすの失速、真空ジェシカの低得点に繋がりましたね。
特に「後に控えているコンビへの得点」を配慮して低めにされた真空ジェシカは、その後に控えているコンビに高得点が続いたことからも、モグライダーと共に不利益を被った気がします。
そろそろキングオブコントのように審査員を見直す時期に来ているのかも知れませんね。
M-1グランプリ2021決勝3組の採点
優勝の2文字が見えているオズワルドの逃げ切りを誰もが予想していたと思う決勝3組の決戦。
上沼恵美子の「1組はダメだと思う」発言は誰に向けられたのか不明ですが・・・良くはない発言でした。
インディアンス
採点 3位
ファーストラウンドのネタよりパワーダウン。
オバケ屋敷という展開が読みやすいネタの方が、このコンビのスタイルに合っていると再確認しつつも、やっぱり短い時間で2ネタ見るのは結構きついかも…
錦鯉
採点 1位
サルというバカらしいボケに、ゆっくりおじさんを寝かすというオチがきれいにハマりましたね。
スロースターターなのは相変わらずで、そこは不安が残りましたが他の2組とは大きく差があったと思います。
オズワルド
採点 2位
絵にかいたような失速でしたね。
もともと1本目からして厳しかった気もしますが、それを下回った結果だったと言えます。
錦鯉の後であったことが敗因のように言われていますが、そもそもはネタのチョイスに難があったこと、それとちょっと本人達が「王様のようにふるまった」ことが大いに問題だったと思います。
1本目と2本目で最初の入り方、雰囲気などが違っていて構えられた感はありました。
このあたりを考察していきたいと思います。
オズワルド失速問題の考察
ファイナルラウンドが始まるまでは誰もがオズワルドの優勝を疑わなかったはず。
それぐらい流れは来ていたのですが、結果は見事すぎる失速。
1本目のネタが過大評価だったか
審査員は絶賛しましたが、個人的に笑いの量が少なく「上手かった」が「笑いの量は足らない」と感じさせる結果でした。
直前の真空ジェシカと比較すると上手かったのはオズワルドが勝っていましたが面白さではどうだったのか。
話芸が評価された結果の高得点でしたが、今大会は分かりやすいネタが評価される傾向だったのが後に響いた気がします。
2本目のネタは複雑さが笑いを減らす
2本目の割込ネタについてはトマトを投げるのくだりで客席から「悲鳴が起きる」という不幸がありました。
こうした「漫才の邪魔」になる行為は本当にやめて頂きたいと思います。
ただM−1の客層は、こういうものです。
そこでABCお笑いグランプリという大阪でもガチのお笑い好きが見る大会で優勝したネタをM−1に持ってきたのが正しかったのか、そこは疑問が残ります。
結果、本人達に焦りが現れてしまい、肝心の話芸に狂いが生じてしまいました。
M-1グランプリ2021を終えて
初出場組も多かった今大会ですがモグライダーや真空ジェシカ、ランジャダイあたりは今後のテレビ出演が増えそうですね。
特にモグライダーはツッコミの芝がトークもこなしますし、真空ジェシカも引き出しが多そう。
来年は審査員も変更されそうですし、それにより審査基準のブレも解消されてくると、この3組の活躍があるかも知れません。
ボケの手数からボケの分かりやすさに重きがおかれた珍しい大会でしたが、錦鯉の活躍にも期待したいですね。